長野県須坂市の山あいに、知る人ぞ知る一軒宿「仙仁(せに)温泉 岩の湯」があります。
以前からその立派な門構えの前を通り過ぎるたびに気になっていたのですが、実は“長野県で一番予約が取りづらい旅館”とも言われる人気宿だと知ったのは最近のこと。
今どき公式HPすらなく、予約は基本的に電話のみ。しかも客室稼働率は95%超で、予約が取れるのは1年先という話も!
そんなお宿に、なんとキャンセルが出て「一休.com」で3日後のド平日に空室を発見(キャンセルが出たときのみ一休で予約ができるようです)。ちょうど夫婦そろって育休中だったこともあり、「これは行くしかない!」と、2歳児と生後4か月の赤ちゃんを連れて行ってきました。
大人が癒しを求めて訪れる宿という印象が強く、はじめは「子連れで行って大丈夫かな?」と正直不安もありました。
でも実際に訪れてみると、赤ちゃん連れを特別扱いするわけではなく、自然に寄り添うおもてなしが随所にあり、小さな子どもがいても自然体でリラックスできるゆったりした時間が流れていました。
今回はそんな「仙仁温泉 岩の湯」での滞在を、子連れ目線でレポートしたいと思います。

基本情報
| 施設名 | 仙仁温泉 岩の湯 |
| 住所 | 長野県須坂市仁礼3159 |
| アクセス | 須坂長野東ICより車で約20分 長野電鉄 須坂駅よりタクシーで約15分 |
| 電話 | 026-245-2453 |
| 訪問時期 | 2025年10月 |
| 同行者 | 大人2名、子ども2名(2歳、0歳(生後4か月)) |
| プラン名 | 仙郷亭宿泊 |
| 料金目安 | 大人1人43,000円~(子ども1人6,000円~) |
※本記事の情報は2025年10月時点のものです。最新の内容や料金等につきましては、直接施設へお問い合わせください。
部屋:広々和室+アンティークな居間+テラスで走り回れる最高の空間!
岩の湯には3タイプの部屋があり、料金が高い順に「仙山亭」、「仙郷亭」、「仙寿亭」という名がついています。今回は真ん中のグレードにあたる 仙郷亭に宿泊してきました。
12畳の和室とアンティーク調の居間
部屋に入ると、まずは12畳の和室があります。和室には子ども用のお昼寝布団が用意してありました(赤ちゃん用だけでなく、上の子の分まで!)

上の子は寝相が非常にアクロバティックなので、事前に大人用の布団を+3,000円で追加してもらっていました。それでも夜中には布団の外へ転がり出てしまっていたので、正直無料のお昼寝布団だけでも十分だったかもしれません。。
クローゼットには、大人用の浴衣・作務衣・足袋がしっかり揃っていて、子ども用にもかわいい浴衣とズボンも用意されていました。さらに、子ども用のサコッシュもあって、中にはタオルと紙風船が入っていました。ちょっとしたお宿からのプレゼントのようで、子どもも嬉しそうに遊んでいました。


なお、室内は暖房と床暖があるため、冬の寒い時期でもぬくぬく快適温度です。
和室の隣には広縁というには贅沢すぎる洋風の居間があります。こちらにはアンティーク調の大きなソファが置いてあり、授乳をするのに大変便利でした。

ミニキッチンには電子レンジ完備
居間エリアにはミニキッチンがあり、なんと電子レンジ完備。おそらく標準的な部屋なのだと思いますが、電子レンジが標準装備されているのは珍しいですね。


我が家は小型の哺乳瓶消毒機を持参しましたが、電子レンジがあればレンジ消毒派のご家庭でも問題なく対応できます。 離乳食の温めも できて子連れには嬉しい設備です。
ちなみに我が家は、哺乳瓶消毒は小型のスチーム消毒機を使用しています。ミニキッチンがあることで、しっかり哺乳瓶コーナーのスペースを確保できて便利でした。

我が家の旅行中の哺乳瓶消毒方法はこちらで詳細に紹介しています。

子どもも遊べる広々テラス
居間の窓を開けると、広々としたテラスがあります。ロッキングチェアなどおしゃれな家具も配置されています。季節が良いときには、ここでのんびりコーヒーを飲んだり、子どもを遊ばせながら外の空気を感じたり…とても贅沢なひとときが過ごせます。


テラスはしっかり囲われていて、子どもがどこかへ抜けて行ってしまう心配もありません。完全にプライベートな空間なので、2歳の息子ものびのびと安心して遊べました。
テラスにはコンセントがあるので、PCを持ち込んでの作業もできそうでした。
一点注意として、部屋の場所によるかもしれませんが、我が家が泊まった部屋は室内だとauは圏外でした。ただ、テラスに出れば電波を拾えたので、我が家はテザリング用の予備スマホをテラスに置いて電波を飛ばしつつ使いました。逆に言えば、自然の中でデジタルデトックスをするのにはぴったりの環境です。
洗面所にはおむつゴミ箱
奥に進むと洗面所があります。こちらも木目調のとても素敵な空間が広がっています。小さい子ども連れだということを伝えていたからか、予めおむつゴミ箱が用意されていました。

アメニティはこんなかんじ。子ども用の歯ブラシも置いてありました。


シャワールーム・トイレ
洗面所の奥にはシャワールームとトイレがあります。


お部屋自体には湯舟はありませんが、岩の湯には素敵な貸切風呂がいくつもあり(このあと詳しく紹介します)、私たちはそちらを利用したので、結局シャワールームの出番はありませんでした。
間取り・部屋の位置
お部屋の間取図はこんなかんじです。

※縮尺などは適当なので、「こんなイメージ」程度でご参照ください。
今回は小さい子ども連れと事前に伝えていたからか、廊下の端にあたる角部屋に案内していただけました。部屋にいると、時々廊下の足音がかすかに聞こえる程度で、話し声などはまったく気にならず、とても静かに過ごせました。
風呂:4種の個性溢れる貸切風呂は予約なしではしごできる。名物の洞窟風呂も。
岩の湯には4つ貸切風呂があります。
※最もグレードの高い仙山亭のお部屋に宿泊の場合は、さらに専用の貸切風呂が1つあります。
事前予約は必要なく、空いていればいつでも無料で入ることができます。
この「空いていればいつでもどうぞ方式」は、気軽に利用できる点ではメリットですが、逆にいつも使用中でなかなか入れないのでは、という不安がつきまといます。
部屋にはシャワールームしかないので、大浴場に連れて行く予定のない赤ちゃんは、最悪お風呂に入れないかも…と少し心配でした。
結論、心配ご無用。
たしかに人気のある露天風呂は使用中のことも多かったですが、どこかしらは空いているのでどこにも入れないということはなかったです。
特に内風呂のみの家族風呂は、見る限りいつでも空いていました。赤ちゃんを入れるには、むしろ外気温を気にしなくてよい完全内風呂の方が使い勝手が良いので、下の子はこちらの家族風呂に入れました。
ではそれぞれの貸切風呂をご紹介。
家族風呂
ちょっと暗いですが、家族風呂はこんなかんじ。
脱衣所とお風呂の間に仕切りがなく、コンパクトなお風呂です。

無想の湯
奥まった場所にある貸切風呂で、一番広々としており景色もご覧の通り。
人気のようで使用中のことが多かったです。
内側のお風呂はジャグジー機能付き。


シャワールームが脱衣所のすぐ隣にあり、シャワーは2本あります。


野守の湯
入り口から少し下った場所に脱衣所があり、お風呂に行くにはさらに階段を下ります。


手前の湯舟はジャグジー機能付きです。森林浴をしながらの湯あみが楽しめます。


露天風呂に隣接してシャワーブースがあります。

風姿の湯
階段を上ったところに脱衣所があります。

内湯はジャグジー付。露天風呂横には、寝湯のような浅い湯舟がついていて、息子はここが気に入ったようで長いこと入っていました。


写真にはないですが、内湯の隣にカラン付きの洗い場があります。
子連れオススメの貸切風呂
赤ちゃんと一緒に入る場合は、内湯の隣にカラン付き洗い場がある「風姿の湯」か、完全に内風呂タイプの家族風呂がおすすめです。身体をしっかり洗えるスペースがあり、外気温に左右されないので、ねんね期~ハイハイ期の赤ちゃんでも安心して入れます。
一方で、無想の湯・野守の湯は開口部が大きく、ほぼ屋外のお風呂。これがたまらなく気持ちいいのですが、赤ちゃんの場合は気候の良い季節限定かなと思います。また、洗い場はシャワーブースのみなので、ねんね期の赤ちゃんは折りたたみバスチェアを持参すると便利かと思います。
2歳児くらいになれば、どのお風呂も問題なく楽しめるかなと思います。我が家の息子も親が交代でお風呂に行く時には「〇〇くんもいっしょにいく〜!」と毎回ついてきて、ひとりだけ全貸切風呂制覇をしていました。
なお、貸切風呂にはベビーベッドやおむつ台はありませんが、脱衣所にバスタオルを敷いて着替えさせていました。
どの貸切風呂にもバスタオルが山積みで置かれています。部屋からタオルを持ち出さなくていいので、思い立ったときにふらっと入れるのが便利でした。
名物の洞窟風呂
岩の湯には大浴場もあり、名物の洞窟風呂があります。
男女それぞれの大浴場(内湯・露天)があり、奥の扉を開けるとそのまま混浴の洞窟風呂へつながっています。
混浴と聞くと少し構えてしまいますが、洞窟風呂の入り口には不織布の湯あみ着が用意されていて、上下しっかり隠れるので、初心者でも抵抗なく利用できます。
洞窟風呂の中は迷路のように入り組んでおり、温泉の滝を滝登りのように上がっていく場所もあったりして、探検気分で大人も楽しめます。
ただ、洞窟内は薄暗いので、我が家の子どもにはちょっと怖いかなと思い、親だけで交代で入りに行きました。
ちなみに、大浴場の脱衣所にはベビーベッドが完備されていて、赤ちゃん連れでも安心して利用できる設備が整っています。
食事:ベビーベッド完備の完全個室でゆったりと食事を楽しめる
個室の食事処
夕食も朝食も、食事処の個室でいただきます。
そして驚いたのが、個室にしっかりしたベビーベッドを用意して頂いていました!家庭の寝室に置くような立派なタイプで、下の子も安心してぐっすり眠ってくれました。

翌朝はまだ眠かった上の子がベッドを占領していて、兄弟ふたりで仲良く交互に使わせていただきました。
また、念のため持参した自前のバウンサーもとても役立ち、食事中も落ち着いて過ごすことができました。


夕食:美しくておいしい、そして久々の「大人の時間」
料理はとにかく美しく、どれも本当においしくて感動 !
「こんなにゆったり食事をしたのはいつぶり!?」と思うほどに、食事を味わい楽しむことができました。








さらに、2歳の子ども用には追加料金なしでご飯とみそ汁などを用意していただきました。

大人の料理を少し取り分けながらパクパク食べてくれました。
食事はトータルで約2時間。長丁場で少し心配もありましたが、
・ベビーベッドやバウンサーで安心
・子ども用ご飯がしっかり用意されている
・スタッフの方の心配りが素晴らしい(息子用には木製のおもちゃも持ってきてくれました)
このおかげで、子どもたちも機嫌よく最後まで過ごすことができました。
そして何より印象的だった(大変助かった)のは、息子が担当のお姉さんスタッフさんを大好きになってしまったこと。
来てくれるたびに嬉しくてニコニコ。2歳児の猛烈アピールにも、嫌な顔ひとつせず優しく接してくださり、一緒に写真まで撮ってくれました。
帰宅してからも息子はこの写真を嬉しそうに眺めていて、家族の良い思い出になりました。
他のスタッフさんも子どもに優しく、ホスピタリティの高さに終始感動しっぱなしでした。
朝食:和食・洋食から選べて子ども用プレートも
朝食も同じ個室でいただきます。
和食 or 洋食を選べますが、今回は洋食をお願いしました。
スープやパンが提供され、量もちょうどよく、とてもおいしい朝ごはんでした。






そしてここでも子ども用のプレートを用意して頂いていました。これまた追加料金なしなのが驚き!

大人のパンやデザートも少し取り分けながら、もりもり食べてくれました。
プラン/館内施設/サービス:人気の秘密は大満足のホスピタリティ
子ども向けプランはなくても大満足のホスピタリティ
岩の湯には「ベビープラン」のような子連れ専用プランはなく、宿泊プランはひとつのみ。
パックとしてのプランを提供するのではなく、一組ごとの状況に合わせてその場で柔軟に対応してくれるスタイルのおもてなしが印象的でした。
小さな子ども連れだと「他の宿泊客に迷惑をかけないか」、「赤ちゃんプランじゃないと不安」と感じることもありますが、岩の湯ではプランがなくても圧倒的なホスピタリティがその不安をすべて払しょくしてくれました。
「お子様連れ、ウェルカム!」というより、さりげなく自然で心地よい寄り添い方でサポートしてくれたという印象です。親も子も肩の力を抜いてリラックスして過ごすことができました。
館内施設:どこもかしこも「さりげない子どもへの優しさ」
館内は、いくつもの離れが渡り廊下や階段で繋がる独特の造りになっています。
その途中途中に書斎のようなスペースがあり、椅子に腰かけて読書を楽しんだり、窓の外を眺めたりと、のんびり過ごすことができるようになっています。


その一角にさりげなく絵本コーナーがあったり、おもちゃが置いてあったり、ハンモックや木馬などが設置されていたりと、子どもも楽しめる工夫がいっぱい。押しつけがましくないけれど、ちゃんと子どもが喜ぶ絶妙な配慮に、またしても感動。


ただし、建物は山の斜面を利用した造りになっており、随所に階段があるためベビーカーでの移動はできません。
季節の空気を感じながら抱っこで移動しましょう。
また、お風呂や食事処へ向かう際には、何度か屋外の渡り廊下に出る箇所があるので、寒い時期などは温かい服装で移動するのが良さそうです。(旅館にいながら季節の空気を存分に味わることができるのも魅力なのですが、、、)
ぜひ訪れたいクラシカルカフェ「櫓」
チェックアウト後、館内にあるカフェ「櫓」に立ち寄ってみました。
まるで洋館のようなクラシカルな雰囲気。宿泊していなくても立ち寄ることが可能で、週末には満席になるほどの人気なのだとか。
この日は平日のお昼どきに伺ったからか、私たち以外にお客さんがおらず、眺めの良い個室に案内していただきました。 しかも担当してくれたのは、昨日の食事でお世話になったお姉さんスタッフさん!息子はもう嬉しくて仕方がなく、終始鼻の下が伸びっぱなしでした 。

ケーキがまた絶品で、カフェ自体の雰囲気も素晴らしく、岩の湯に来たら必ず立ち寄ってほしいスポットです。


そして帰りには、お姉さんスタッフさんがなんと車までお見送りしてくださり、息子は最後までご満悦。
本当に、最初から最後まで心に残るおもてなしでした。(大変お世話になりました)
まとめ:赤ちゃん・幼児連れでも安心リラックスできるホスピタリティ溢れるお宿。平日に休みを取ってでも年に一度は訪れたい
仙仁温泉 岩の湯は、「子連れ歓迎です!」と大きくアピールしている宿ではありませんが、実際に泊まってみると、随所に“家族へのさりげない気づかい”が感じられ、赤ちゃん連れ・幼児連れでもとても快適に過ごせました。
静かな山の中で、家族だけの時間をじっくり楽しみたい方に、岩の湯はとてもおすすめの宿です。
子ども連れでも気を遣いすぎず、でも上質な滞在をしたい…そんな願いを叶えてくれる一軒宿でした。 予約困難ではありますが、平日に有給を取ってでも年に1度は通いたいです。
【注意点】
・館内移動の際に屋外に出るため気温に注意(寒い時期は上着必須)
・階段多め(ベビーカー不可)
・食事時間が長め(子どもが飽きない対策を!)
露天風呂付客室のあるこちらのお宿もオススメ!


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